ニホンワインノミクス!

日本ワインを応援しつつ、ときどき経済学的視点で考えてみるブログ。

日本ワインと多角化2:多角化の類型に企業の事例を当てはめてみる

こんにちは!ミユです。

日本ワインと多角化の後編です。

今回は、多角化の4つのパターンについて説明しながら、前編でリストアップした企業の事例を確認してみたいと思います。

多角化って何?という方にもわかるように書きますのでご安心を^ ^

前編がまだの方はこちらからどうぞ!

nihonwinenomics.hatenablog.com

多角化とは?

多角化は、アメリカの経営学イゴール・アンゾフが提唱した経営戦略の1つです。

前回の繰り返しですが、簡単に言うと、

既存事業以外に進出して相乗効果で成長しよう!

という戦略のことです。

この相乗効果をシナジー効果といいます。

多角化には、単に事業拡大だけでなく、リスクの分散や経営資源の有効活用といった側面もあります。一方、多角化の推進には莫大なコストがかかり、失敗したときの損失も大きいと言われます。

多角化の4つの類型

前編でちょこっと登場していますが、多角化には次の4つのパターンがあります。

以下、それぞれ企業の事例と一緒に説明します。

なお、事例の分類は筆者の個人的見解ですので、あしからず・・・。

1:水平型多角化

ワイン以外の酒類メーカーがワインに参入するケース

水平的多角化は、既存の技術を活用し、既存と同様の顧客をターゲットに新製品を投入する多角化です。

マーケティング面でのシナジー効果が期待でき、他の多角化に比べてリスクが低いですが、その分大幅な増収は見込めないとされます。

前編で挙げたように、老舗の清酒・焼酎メーカーがワインに参入する例が多くみられます。

中でも規模が大きいのは、鹿児島県の焼酎メーカー・本坊酒造でしょう。山梨県マルスワイナリーが有名ですが、山形県の高畠ワイナリーや熊本県の熊本ワインも資本関係はないものの同社の関連企業です。

もう1社あげるなら、焼酎の「いいちこ」で有名な大分県三和酒類安心院ワイン。清酒メーカーとして創業し、実は焼酎よりも先にワインの製造を開始しています。

このパターンの企業はワインに限らず様々な酒類に展開している例が多く、上の2社は今ブームのクラフトジンも製造しています。

ちなみに前編で挙げた宮崎県・雲海酒造の綾ワインは、9月28日から「雲海ワイン」にリニューアルされるそうです(日本経済新聞 2018年8月31日朝刊 九州経済)。

ビール大手のワインへの参入

過去記事で書きましたが、国内のビール市場は90年代以降縮小の一途を辿っているので、ビール大手の多角化は当然の流れとも言えます。

酒類以外の分野にも範囲が及んでいるため、水平型と言ってよいか迷うところですが、日本ワインに限った話として紹介します。

サッポロビール

1974年に創業100年を記念してワイン造りを開始しました。山梨県で主力ブランドのグランポレールシリーズ、岡山県で低価格帯のデイリーワインを生産しています。

ちなみにグランポレールの「ポレール(polaire)」は、フランス語で北極星のことで、同社のルーツである開拓使のシンボルです。ビールのラベルでもおなじみですね★

キリン

1971年から輸入ワイン等の販売は行っていましたが、製造側としては、2006年に国内ワイン最大手のメルシャン連結子会社化し、M&Aの形で参入しています。

アサヒビール

1987年に山梨県のワイン製造業者を買収してワイン事業に参入しましたが、2005年に売却しています。一方で2002年に協和発酵工業との合弁により同社の傘下にあった山梨県山梨市のサントネージュワインを傘下に収め、現在に至ります。

2:垂直型多角化

ワインの販売側がワイン製造に参入するケース

垂直型多角化は、既存製品の製造フェーズや流通フェーズに展開する多角化です。

既存製品の需要がある限り安定した収益を見込めますが、需要が減ると収益が一気に悪化してしまうリスクもあります。

ワイナリーが販売店を経営するようなケースが当てはまりますが、販売側から入ってきた2社の事例を挙げます。

木下インターナショナル

ワイン等洋酒の輸入卸売を行う商社です。国産ワインの将来性を考え、1991年に山梨県甲府市酒折町にシャトー酒折ワイナリーを設立しました。自社のネットワークを活用し、世界から製造技術や設備を導入してワイン造りをしています。

パピーユ

2006年大阪で創業し、ワイナリーの開設を目標にワインショップやレストランを運営していました。2013年、心斎橋に程近い街中に島之内フジマル醸造をオープンし、都市型ワイナリーとして話題になりました。2015年には東京にもワイナリーを開設し、大阪と東京で店舗を展開しています。*1

3:集中型多角化

関連性のある異業種からワインに参入するケース

集中型多角化は、自社の中核技術やターゲット顧客に関連する事業に参入する多角化です。

水平型や垂直型に比べると、異業種への参入という点でより大きなシナジー効果が期待できます。

キッコーマン

日本を代表する醤油メーカーが、醤油醸造技術をワインにも活かせるとみて1962年にワイン製造会社を設立し、2年後に社名をマンズワインに変更しました。日本のワイン用ぶどうに適した「レインカット栽培法」を開発し、国内ワイン産業に大きな影響を与えています。

雪印乳業(現:雪印メグミルク

1984年に山梨県のワイン製造業者を買収し、雪印ベルフォーレとして双葉町(現在の甲斐市)で乳製品工場に準じた設備で非加熱処理のワイン造りをしていましたが、不祥事による経営悪化のため、2002年にワイナリーを手放しました。

サンクゼール

こちらは顧客面の関連性が見える事例です。長野県・斑尾高原でペンション経営やジャムの製造販売から始まった企業ですが、1988年からワインの製造を開始しました。全国にワインやジャム等の販売店や飲食店を展開するほか、長野のワイナリーではブライダル事業も手掛けています。

4:コングロマリット多角化

まったくの異業種からワインに参入するケース

コングロマリット多角化は、既存事業と関連性のない事業への多角化です。このためシナジー効果はあまり期待できませんが、企業としてリスク分散を図ることができます。

ワイン産業にも、多様な業種の企業が参入しています。

シャトレーゼHD

全国に店舗を展開する山梨県の菓子メーカー。2000年にシャトレーゼ勝沼ワイナリーを設立しました。2002年には雪印乳業からベルフォーレワイナリーを買い取り、2つのワイナリーを運営しています。

ジュン

人気ファッションブランド・ロペを展開するアパレルメーカー。創業者・佐々木忠氏のワイン好きが高じて1979年に山梨県勝沼シャトージュンをオープンしました。

フジッコ

煮豆や佃煮などでおなじみの大手食品メーカー。食卓の演出の一環としてワイン製造への参入を決め、1963年山梨県勝沼フジッコワイナリーを設立しました。

シダックス

カラオケボックスで有名な外食大手。ワイン愛好家である創業者・志田勤氏が1999年に故郷の静岡県に設立したのが、中伊豆ワイナリー シャトーT.Sです。ホテルやスポーツ施設を併設し、ワインリゾートとして展開しています。

塩山製作所

山梨県半導体部品メーカー。海外への生産移管に伴って勝沼の工場を改装し、2017年にMGVs(マグヴィス)ワイナリーをオープンしました。ワインの製造過程に半導体技術を活用しており、集中型多角化とも言えるかもしれません。*2

樫山工業

国内外に拠点を持つ長野県佐久市の真空機器メーカー。2007年に経営破綻した安曇野ワインを引き継ぎ、”安曇野” の観光地としてのブランド力に勝機を見出して、安曇野ワイナリーを設立しました。

まとめ

2回にわたり、ワイン産業における多角化について書いてみました。

多角化企業が本業で蓄積した技術やノウハウを活かし、ワイン造りやPR面などで新たなアイデアを取り入れることは、その企業だけでなく、ワイン産業にもプラスに作用すると考えています。

今後も意外な企業がワイン産業に参入してくるかもしれませんねー

企業の事例は、特に記載がない限り各社のホームページか、山本博さんの『新・日本のワイン』(早川書房、2013年)を参考にしました。5年前の本ですが、日本のワイン産業の歴史や現状がよくわかる本です。興味のある方はチェックしてみてください。

www.hayakawa-online.co.jp

 

ではまたー